メンヘラの絶望的な恋心
いつの頃からか忘れたけど、私は「絶望が見えると人は死んでしまう」と思い込んでいた。
なんかの映画で冒頭ジョン・トラヴォルタが「オレのオヤジは絶望で死んだ」って言うんだ。人は病気で死んだ、というけれど、それは表向きで内側から絶望が蝕んでいって死んだんだ、って。
ああ、私と同じ考えの人がいたって安心した。
だから、メンヘラな私は絶望しないように生きてきた。うまく道を踏み外さないように、絶望の淵に落ちないように用心深く生きてきた。
コツは「期待しないこと」
メンヘラな自分にはなんか出来るなんて思わないこと。
夢見ないこと。これも呪いの一つだろうけれど、ビョーキを発症させずに生きていく本能的智慧だったんじゃないかな。
ところで私の恋心……
最近すごく運がいい。仕事もすんなり見つけたし、しかも自分に向いてそうだし、さかもと未明さん?がコメントつけてくれるし、私の人生思うがまま。
彼と別れた直後はもっとはっきり運が良くなって、逆に彼といる間はすごく運が悪くてなにやっても物事裏目に出て、やることなすこと間が悪くて、じゃんけんにすら勝てなかった。
やっぱりメンヘラ女がしちゃいけない恋だったんだ。
ホント、私が馬鹿だから運を掌る神様が噛んで砕いてわかりやすく示してくれてる、って苦笑しちゃう。
「オマエの一番欲しいものは手に入れさせてやらないけど、2番以下は全部やろう」
ってコンプロマイズ(えーっと日本語だとなんだ?代償?)されてるみたいに思って余計いじけてしまったりしていた。
ただ、別れてくれた彼が、生身の彼より好きだ、ってわかって、だったら無理に忘れよう、立ち直ろうとしないで、このままずっと思っててもいいかな、だって、多分彼より理想のヒト現れないもん、なんて思ってたら今日の未明さんの話も私の中ではどこか繋がっている気がする。
だけどね、私、ちょっとちがうんだー。今、女盛りのような気がする。
今まで好奇心はあるけど、女として男を求める欲求に駆られたことがない。なんか恥ずかしい。我を忘れて溺れるなんて出来ないし、怖い。
それがね、今頃になってこれ「女」かなあって思う感情が自分の中にあるんだ。それは多分、もうそろそろ子供産めなくなりますけど、本当に産んでおかなくていいんですかぁ?
っていう自然からのファイナルコールなのではないか、と思うの。
いいの?本当に要らないの?後から後悔しない?って。
いいです。そんなこと念押してくれなくて。
まだ清い少女だった頃好きだった、20代後半の男性は「お話してくれるだけでいいんです。」とそれで精一杯の告白だった私に「お話だけじゃ僕は嫌です。」ときっぱり断った。本当にお話以上の関係を望んでいなかった私は「ヤラシー」みたいにドン引きしちゃって、それで諦めちゃったんだけど、今になるとね、
「お話だけじゃ僕は嫌です」
って言ってくれた相手の誠実さみたいのわかるんだ。
20代後半の男性だもんね、それが普通なんだろうな。
「あなたは世の中を頭で理解しようとしてる。僕には異次元の人」って言われた。これは、あなたはやっぱりメンヘラ気質だねを言い換えたものだろうか。
ああそうなんだ、たとえ付き合ったとしても、その人はメンヘラ女の恋心を理解できなくてうまくいかなかったんだろうな。
この間振られちゃった彼はね、
「君の第一印象は『この人ずいぶん理屈っぽい人だなー』だった」
私頭悪いですと告白する彼に「あなたが頭悪いていうなんて、そんなの酔っ払いが酔ってないっていうようなもんですよ。」
って褒められてるんだか窘められてるんだか、認めてくれてるんだか拒絶されてるんだか、わからない言われ方をしたけど、頭の良しあしじゃなくて、彼にはわからなくても、見えること感じちゃうこと、嗅ぎ取っちゃうことがあるらしい。って最近わかってきた。
賢者の友達が教えてくれたんだけど、ある女性が性転換して毎日ホルモン注射を打っていたら、段々細かい心の動きが薄れて思考が単純化していくのを感じた、って書いてるんだって。そんなもんかもしれないね。
女には男に見えない細かいものとかはっきり見えちゃって、男には大きいものとか女には見えない裏側が見えるのかもしれない。それが溝であり、うまくはまれば、お互いに欠けているものを補え合えるチャンスなのかもしれないけど。
バーチャルな恋心ではそういう発見は出来にくいかも。でも、傷つきたくない、傷つけたくないと思っているうちはそれでいいんだろうな。
きっと誰か好きになっちゃったら、恋に落ちたら、そんなことなにもかもどうでもよくなっちゃうもん。彼しか見えなくなっちゃうもん。
本当の恋愛ってまさに「落ちる」って感じ。ドラッグみたいでジャンキーになっちゃう。
彼に散々待たされてね、2時間半くらい経って、ようやく待ち合わせ場所に来たときにはもうこっちの時間が15分くらいしか残ってなくて、焦っていたんだけど、遠くから彼が歩いてくるところが見えたら、彼が私の視界に入ったとたん、喉になんかボールみたいなものピョコッとはまっちゃったみたいになって、息が出来なくて「こんにちは」も言えなかったの。だって声がでないんだもん。心臓バクバク‥
ただ嬉しくて、この人大好きだ、って思いがこみ上げてきた。
一方的に彼がなんかしゃべって、それが昨日話した、女優さんの別れ話で、なんでわざわざ呼び出されて、散々待たされて。時間無いっていうのに他人の別れ話聞かされなきゃいけないの?ってとっても悲しかったんだけど、でも顔はほころんでしまう。この人には笑顔だけ見せていたい。
別れ際、駐車場まで彼を送っていって、キスしちゃおう、このうるさい口を塞いじゃおう、って企んでいた。
でも、車に乗り込んで、窓ガラス下ろした運転席の彼に窓から首突っ込んで、頬にキスするのがやっとだった。彼は何か言ったけど、聞き取れなかった。
それが彼を見た最後だった。ああ……絶望という名の〝わかれ〟こんなことなら唇にすれば良かった。もうちょっと勇気を持てば良かった。彼からのキスはあったけれど、自分からは勇気が無くてできなかった。
せめてキスくらいはちゃんとしたかったなあ…それが今の私の恋心かな。
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